カエルとゴミムシの因縁

カエルというとその主食の多くは昆虫であるが、その中でもゴミムシとの因縁はすごいものがあるので少し書きたい。

ゴミムシは落ち葉や石の下などに潜み、
成虫は小昆虫を捕食する、小さな肉食性の甲虫である。湿ったところを好むので必然と同じ環境に棲むカエルの格好の捕食対象に選ばれる事になる。昔からゴミムシの仲間はカエルに相当な数を捕食されてきたのだろうから、さながら大河ドラマのような、何代にも渡っての骨肉の争いの歴史がゴミムシとカエルの間にあった事は想像に難くないだろう。
たとえば、ホソクビゴミムシの仲間は腹の中に
強力ガスを発生させるが、有名なのはミイデラゴミムシ(別名へっぴり虫)であり、水蒸気とベンゾキノンという有機化合物が含まれる100度をも超える高温の有毒ガスを尻から噴射することはよく知られている。
虫を丸呑みにするカエルの腹の中でこの熱い屁を放つ事が成功できれば、カエルは堪らず吐き出してしまい、ほぼ100%の確率で生還するというのだからすごい。
数え切れない生命を幾世代に渡りカエルに奪われ続けた因縁の歴史の中から生まれた執念の技だろう。

さらに、アオゴミムシ亜科のオオキベリアオゴミムシという種類のゴミムシはカエルに食べられるどころか、なんと反対にカエルを食べてしまうのだ。このゴミムシは幼虫の時にカエルを待ち伏せして襲いかかり、喉元に大きく発達した顎で食らいついて血を吸い、衰弱したところを食べてしまうという残虐ファイトを行う、しかもこの虫が成虫になるまでには、三匹ほどのカエルを食べてしまうというのだから驚きだ。ちなみに成虫になってからも夜襲をかけてカエルを襲う事もあるというし、屁もそれなりに放(ひ)るとの事らしい。カエルにとってはかなり厄介な敵だろう。

私は、カエルに食べられ続けて進化した、いにしえのゴミムシの祖先達に想いを馳せていると大河ドラマを観たような感慨に浸るのだ。
野山の草場の陰では、今日もカエルとゴミムシの因縁は続いている。